学ぶ

【未来を語ろう #2】金融機関の課題編 
地域金融機関と連携し、新たな事業を協創できるところに
商工中金のもう一つの存在意義がある。

時代が大きな転換期を迎えている今、取引先企業だけでなく、金融機関でも新しいビジネスモデルの確立が必要となっているが、商工中金の目指すところは自己の変革のみにとどまらないという。全国に拠点を持つ公的な組織として、地域金融機関の今後にも目を向けている商工中金。続いては市川に、地域金融機関が抱える課題やこれからの連携・支援の在り方を語ってもらった。

商工中金 札幌支店 営業次長

市川 真樹

総務省入省後、地方行財政や政策金融などの業務を経験し、2007年商工中金に入社。池袋支店、組織金融部を経て、経営企画部の所属となり中期経営計画の策定などに携わる。2020年より現職。

マイナス金利環境の継続により、
地域金融機関の収益力が低下している。

—— わが国の金融機関、特に地域金融機関がどのような課題を抱えているのか教えてください。

銀行業の最大の収入源は融資から得られる利息収入ですが、日銀の金融緩和政策やマイナス金利政策が長期化する中で、地域金融機関の基礎的な収益力が低下しています。都市圏以外のエリアでは人口減少による資金需要の低下などもあり、地域金融機関を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。したがって、これからはベンチャー育成や投資の活用、コンサルティング業務、地元の資源をブランド化して販売する地域商社など、持続可能なビジネスモデルを確立するための新しい収益事業を強化していくことが課題だと思います。

また、多数の企業がコロナ禍の影響を受けている現在、ファイナンスを通じて取引先を支援すると同時に、増やした融資の健全性も確保していかなければなりません。

商工中金は中立的な立ち位置や全国規模のネットワークを活用し、
地域金融機関の新しい収益事業を支援していく。

—— 地域金融機関が厳しい経営環境に置かれている今、商工中金だから担える役割とはいかなるものなのでしょう?

われわれ商工中金はかねてより地域金融機関との連携を業務運営の基本の一つとしてきました。たとえば私が勤務している北海道でも、2021年2月に地元の北洋銀行さん、北海道銀行さんと連携ユニットを創設。コロナ禍の長期化により一時的に財務状況が悪化している事業者を対象に、協調融資による資金繰り支援や経営改善などのサポートを共に展開しています。

地域では長年、地方銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関がしのぎを削り合っています。今後、複数の地域金融機関が協調し、コロナ禍の影響を受けたお客さまの再生支援をしていくようなときには、意見が食い違う場面も出てくるでしょうが、商工中金は中立性のある公的金融機関です。このわれわれ独自の立ち位置を活かしながら、異なる意見をまとめあげる調整役としての使命も果たし続けていきたいと考えています。

—— 地域金融機関が新しい収益事業に取り組むときも連携・支援をしていくのですか?

お客さまの創業支援やベンチャー育成は、経営支援総合金融サービス事業の中でも重点を置いている分野であり、当然ながら地域金融機関との連携を想定しています。また、大型プロジェクトに取り組むような場合も、地域金融機関や系列のコンサルティング会社と連携し、調査・分析するケースが増えてくると思います。

そのほか、地域商社の販路拡大に際しても、ビジネスマッチングの候補先情報などを積極的に提供していく考えです。商工中金は全国47都道府県に店舗を持ち、約7万社の中小企業と取引していますので、地域金融機関も商工中金と協働すれば、お客さまに提供する候補先情報の幅を広げることが可能です。先進の金融手法や事業性評価のノウハウ提供なども含めて、地域金融機関が新しい収益事業を確立しようとした際に商工中金が支援できることは多数あります。

商工中金と地域金融機関がベクトルを合わせて取り組むことが
日本経済の発展に通じる。

—— 商工中金がこれからも地域金融機関の事業活動をサポートしていくため、共に地域経済を支え続けていくために大事なことはなんでしょうか?

地元に根差して活動してきた地域金融機関はおのおののエリアに詳しく、商工中金は全国規模のネットワークを持っているといったように、金融機関にはそれぞれ得意分野がありますので、お互いの強み・弱みを補完し合い、Win-Winとなれる連携をしていくことが今後も重要だと思います。

この先、国内企業の数の減少も予想される中、限られたパイの取り合いをしていては、お互いのためになりません。新たな事業を協創し、地域経済を盛り立てていくためにも、金融機関同士が互いの特徴を深く理解する。つまり、将来に向けてどのようなコンセプトを掲げ、何をやろうとしているのかを知り、いかなる協力ができるかを掘り下げて、真の意味での連携を図っていくことが大切です。ベクトルを合わせて、企業のため、地域のためにできることを共に考えていく活動こそが、日本経済全体の浮揚と発展に通じるのです。

—— 最後に就職活動の時期を迎えた学生の皆さんにメッセージをお願いします。

今、金融業界には大きな変革の波が押し寄せています。Fin Tech(フィンテック)市場の拡大によりキャッシュレスの流れが加速して、窓口での手続きをはじめとする定型的な業務もどんどんと減っていくでしょう。その中で何が残るかと言えば、それはお客さまの悩みに対して解決策を提示していく仕事。お客さまから最初に相談される存在となり、いかなる課題に対しても最適解を導き出せる力です。ゆえに商工中金は、経営支援総合金融サービス事業というわれわれ独自のビジネスモデル確立に向け、次代への歩を進めています。

そしてこのような変革期には皆さんのような若い方の熱意と柔軟な発想が必要です。私たちと一緒に、日本経済の基盤である中小企業を支援し、地域活性化や産業構造改革に貢献していきましょう。
Recommend
関連記事
学ぶ

【新中期経営計画特集】インフォグラフィックで読み解く商工中金の中期経営計画

学ぶ

【未来を語ろう #1】産業・地域経済の課題編 
従来の金融慣行を打ち破り、不可能を可...

Recruit

採用について