学ぶ

【未来を語ろう #1】産業・地域経済の課題編 
従来の金融慣行を打ち破り、不可能を可能にすることで、
産業や地域経済の活性化に貢献していく。

少子高齢化や地域の過疎化、生産拠点の海外移転など、わが国の経済が多くの課題を抱えている中にあって、商工中金はいかなる機能を発揮していけるのか。苦境に立つ中小企業を支えるためにできることはなんなのか。中期経営計画の策定に携わった市川真樹が課題解決の道筋を指し示す。

商工中金 札幌支店 営業次長

市川 真樹

総務省入省後、地方行財政や政策金融などの業務を経験し、2007年商工中金に入社。池袋支店、組織金融部を経て、経営企画部の所属となり中期経営計画の策定などに携わる。2020年より現職。

環境変化の中で多くの課題に直面している中小企業。
地域ではエコシステムの確立も急務。

—— 日本が抱える課題について、産業や地域経済の観点から教えてください。

産業全体としては、気候変動問題などを背景に大手企業がESG(※1)やTCFD(※2)、SDGs(※3)を推進していることに付随して、中小企業でも生産工程におけるCO2排出量の制限、内燃機関からEV(電気自動車)へのシフトといった環境対策が求められるようになっています。また、少子高齢化や労働人口の減少にともなって、多くの業種で人手不足が深刻となっており、生産性の向上が不可避な状況です。とりわけ製造業においては、後継者の不在による廃業の増加や技術承継の断絶が生じているのも問題であり、中小企業も積極的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生産工程の可視化・効率化を進める必要に迫られています。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、ニューノーマル(新しい生活様式)に合わせたビジネスモデルの見直しも必要となっています。

一方、地域に目を転じると、東京への一極集中によって地方都市の人口がさらに減り、街がスポンジ化することで、地方行財政サービスの質の低下や地方経済の地盤沈下が急速に進む懸念があります。企業活動のグローバル化や工場の海外移転が進む中、国内の多くの地方都市が生産拠点としての役割を縮小させていることからも、地域企業や自治体、金融機関などが連携して経済の活性化を図っていく「地域エコシステム」の確立が急務であると感じます。地域エコシステムの構築は、大規模な自然災害やコロナ禍といった危機に際して、地域経済のレジリエンス(回復力)を高めるためにも重要です。

※1 Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に着目した投資。

※2 Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)。気候変動に関する企業の対応を情報開示する取り組み。

※3 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。

事業性評価を強みとする商工中金だからこそ、
複雑化する経営課題に的確な解を導き出せる。

—— そうした課題を解決するために、商工中金はどんな取り組みをしているのですか?

先に述べた通り産業や地域経済の課題に関しては、われわれの取引先である中小企業への影響も大きく、中小企業が抱える課題やニーズも多様化・複雑化しています。そのため商工中金は、お客さまの課題やニーズを的確に把握するべく、深い対話を通じてお客さまをよく知る活動に力を入れています。把握した課題やニーズに幅広く応えていけるよう、外部機関との連携や課題解決策をコーディネートする力を向上させるための人材育成にも組織を挙げて取り組んでいます。これらの動きを通じて取引先中小企業の企業価値向上に貢献していくこと。それが商工中金の目指す「経営支援総合金融サービス事業」の基本的な考え方です。

また、商工中金の特性を生かした高度なソリューション提供と、徹底した伴走支援、従来以上のリスクマネー供給などを通じて中小企業の課題解決に貢献することを目指した「商工中金イネーブラー事業」も展開しています。

—— 経営支援総合金融サービス事業は、お客さまの財務構造改革や事業再生、産業構造の変革、創業や新産業への挑戦などを総合的に支援するものですが、このようなソリューションを的確に提供できるのは、商工中金が「事業性評価」、すなわち企業の経営状況や事業内容、成長可能性などを適切に評価する目利きの力を強みにしていることが理由なのでしょうか?

その通りです。今日、事業性評価はほかの銀行などでも行われていることですが、中小企業と向き合い続けてきた当金庫の強みはまさにこの事業性評価のノウハウであり、課題解決型のソリューションを提供していく上でもっとも重要なスキルと位置付けています。お客さまからの声としても、自社への理解度という点で当金庫を評価していただいているケースも多く、中期経営計画でも職員一人ひとりのさらなるスキルアップをテーマに掲げているのです。

金融機関にも個性が求められる時代。
発想力を磨き、経営支援総合金融サービスを究めることが、
存在意義を発揮し続けるためのカギとなる。

—— 「イネーブラー」は“不可能を可能にする伴走者”という意味ですが、具体的には従来の金融慣行をいかにして打ち破り、不可能を可能にしていく方針ですか?

たとえば、従来ならばどの金融機関も新規融資はできないと判断していたような状況のお客さまに対し、より深く踏み込んだ事業性評価を行うことで、再生の余地があるポイントを見出して支援をする。さらに、金融機関があまり手がけてこなかった地域特産品や観光資源のブランディングといった高度なソリューションについても、商工中金のネットワークを通じて面展開していきます。

このうちブランディングに関する直近の事例としては、高松に本社を置く企業の伴走支援が挙げられます。アミューズメントおよび滞在型のリゾート施設を運営している当該企業は、新型コロナによる緊急事態宣言などの発出を受けて足元の業況が厳しくなっており、コロナ禍に左右されず、新規顧客層の開拓もできるようなソリューションを望んでおられました。そこで商工中金は提携先の船井総研と協力してブランディング&マーケティングを行い、お客さまの総合事業計画の策定をサポート。不採算事業を整理すると同時に、グランピング事業への参入を核とした事業再構築が進められることとなりました。また、資金面ではメザニン(株式と融資の中間的な金融手法)を用い、国の補助金も活用することで複合的なファイナンスを実行しました。

商工中金は今後も地域経済に影響力を有する中小企業を積極的にサポートするとともに、地域の「稼ぐ力」を向上させるエコシステムの構築にも注力していく方針です。私自身としても現在勤務している北海道で、自治体や複数の企業をつなぐコーディネーターの機能を果たし、地域に資する先進的な事例の創出に挑みたいと考えています。

—— 将来にわたって永く日本社会や中小企業を支え続けていくために、商工中金はどのように進化していくべきだと思いますか?

今後、金融機関は従来以上に個性が求められる時代になるでしょう。そうした中で存在感を発揮していくには、「商工中金と言えば経営支援総合金融サービスだ」と広く認知されるところまで徹底してやり抜くことが必要であり、そのためにも職員個々のスキルや提案力、組織としてのソリューション提供力を地道に向上させ続けていくことが肝要だと思います。 また、複雑化する中小企業の課題に対処していくには、過去の実績や常識にとらわれない発想力が必要ですので、若手職員や個性的な職員の意見をより柔軟に引き上げていけるような企業文化の定着も重要であると思います。AIがいかに普及しても、人間の感性だけは代替が効きません。職員の発想力を生かし伸ばして、人間にしかできない仕事を突き詰めていくことが、わが国の産業や地域経済への永続的な貢献につながると考えています。
Recommend
関連記事
学ぶ

【新中期経営計画特集】インフォグラフィックで読み解く商工中金の中期経営計画

学ぶ

【未来を語ろう #2】金融機関の課題編 
地域金融機関と連携し、新たな事業を協創でき...

Recruit

採用について