プロジェクト

来店客も仕入れ先も大切にする精神で、
地域に深く愛されているスーパーマーケット。

INTRODUCTION
イントロダクション

埼玉県内で4店舗の総合スーパーマーケットを運営している株式会社マルサン。人々の日々の生活に不可欠なスーパーマーケットという業態には、経営上どのような苦労があるのだろうか。さいたま支店の五十嵐裕也がマルサンとの交流の軌跡をたどる。

商工中金 さいたま支店

五十嵐 裕也

2015年入社。新潟支店に4年間勤務した後、さいたま支店に異動。営業窓口として100社余りの企業を担当し融資はもちろんビジネスマッチングや海外展開支援などのソリューション提供も行っている。

開店前に行列ができるほどの盛況ぶり。

—— スーパーマルサンはどんな特徴を持つお店なのですか?

「より良い品をより安く」をモットーにしている地域密着型のスーパーマーケットです。品揃えが非常に豊富で、陳列にも特徴がありますね。商品を売り場にぎっしり並べたり、山積みにしたり。店内を巡っていると、いろいろな商品が目に飛び込んできて、買い物が楽しくなるお店です。また、チラシなども頻繁に出していて、チラシを出した翌日や土・日には開店前に行列ができるほど地域の人々に愛されています。ボリューム感があるのにリーズナブルな「まるさん弁当(まる弁)」は、ランチタイムには飛ぶように売れる人気商品です。

—— 250円(税別)であの立派なお弁当が買えるというのはすごいですよね。

そうなんです。実は私も営業で外回りをするときは、お昼にこのお弁当を買っていて、マルサンさまにはいつもお世話になっているのですが、「まる弁」には500円のものもあり、これが非常にボリューム満点で。食欲旺盛な人に喜ばれていることも人気の要因だと思います。

売上や仕入れに季節性のある商売。度重なる借入負担を解消するために。

—— そのように人気の高いスーパーでも、経営上の苦労や悩みがあるものなのですか?

マルサンさまは総合スーパーとして多種多様な商品を取り扱っており、ゴールデンウイークやお盆、年末年始などには売上がピークに達します。一方で、このような繁忙期には仕入れた商品の支払い額も多額となるため、毎回毎回、借入の検討をしなければなりません。このような状況では借入準備に負担が生じ、仕入れにも影響が出るのではないか、という仮説を持ったことが、財務構造の改革支援をさせていただこう、と思ったきっかけでした。

—— 具体的にはどんな形の支援を考えたのですか?

あらかじめ設定した金額の範囲内で、お客さまが必要な時期に必要な資金を調達できるコミットメントラインという枠の設定です。この調達枠(融資枠)があれば、仕入れ額がピークとなる時期も金融機関との借入交渉に時間を取られることがなく、本業に集中していただけると考えました。このコミットメントラインの構想は、さいたま支店の前任者が以前から温めていたもので。私がマルサンさまの担当を引き継いだ2019年の夏から、提案に向けた活動を本格化することになったのです。

—— 提案に向けて行った取り組み内容は?

コミットメントラインの調達枠を設定するには、お客さまのご商売の季節性、つまり年に何回、資金調達を必要とするタイミングがあるのか、ピーク時は平時とどの程度違うのか、を正確に把握することが必要です。そこで、毎年お預かりしている決算書などとは別に、月々の売上額や支払い額などがより詳細に記された資料をお借りしました。また、お客さまは来店客数や平均客単価といった指標も細かく管理されていましたので、そうしたデータも拝見する中で、ゴールデンウイークやお盆、年末年始などに生じる資金需要の波の大きさをつかむことができました。

さらに、店舗実査として県内の4つのお店を見て回った結果、いずれの店舗も集客力があり、従業員の皆さんのオペレーションもしっかりしていることがわかったため、商工中金としても問題なくご融資ができるという判断に至りました。

「調達枠を価格交渉に使うつもりはない」。社長の人柄に敬服した瞬間

—— 提案に向けてお客さまとやりとりをした中で、印象に残っていることはありますか?

コミットメントラインは必要な資金をいつでも引き出せる枠なので、われわれは当初、お客さまが仕入れをする際に、「これだけすぐに払うからディスカウントしてよ」というふうに、価格交渉にも使っていただけるのではないか、と思っていたのです。ところが社長は、「仕入れ先には日頃からお世話になっているので、調達枠を価格交渉に使うつもりは一切ない」とおっしゃられ…。こうした精神をお持ちだからこそ、マルサンさまは地域の多くの方々に愛されているのだな、と感じ入りました。

—— 本当に誠実な経営者さんなんですね。

はい。本当に誠実で人間味のある方で、仕入れ先のことや従業員の皆さんのことを大切に想っておられます。また、コミットメントラインの設定に際しては、さまざまな資料を頂戴したり、複数回にわたる面談をお願いしたりしていたので、私としても手間をかけさせて申し訳ないという気持ちをお伝えしたところ、「手間に感じるなんてとんでもない。弊社についてこんなに興味を持ってもらい本当にうれしい。今回の提案についても非常に魅力的であり感謝している。必要な協力はなんでもするので言ってほしい」というお言葉をいただいて、心からありがたいと感じましたし、気を引き締めて案件を進めなければいけないと、そこからもう一度アクセルを踏み直すことができたのです。

—— 2020年1月に実行したという融資の内容を教えてください。

融資の実行に先立って地域の金融機関にもお声かけをした中で、足利銀行さんと埼玉縣信用金庫さんにご参加いただけることになり、3行合計で6億5,000万円のコミットメントラインを設定しました。お客さまは最長で5年間、この金額を上限とする調達枠を自由に利用することが可能です。

新型コロナが発生し、地域を支えるスーパーの存在感がさらに大きくなっている。

—— 今回の融資には円滑な事業承継をサポートするための仕組みも入っていますよね。

ええ。マルサンさまの社長はお元気ですが、年齢のことを考えると事業承継も今後のテーマになってきますので、事前準備の一環として、経営者保証に関するガイドラインにのっとった「無保証」での融資を組成しました。一般的に中小企業の経営者は、金融機関から融資などを受ける際、個人保証(連帯保証)を付けることが多いのですが、この場合、後継者となる方も個人保証を引き継がなければいけなくなります。それが敬遠されて事業承継が進まないケースも少なくないため、今回は個人保証の免除を行うことで、次世代の方が経営権を継承しやすい形にしています。

—— お客さまはその後、資金の調達枠をどのように活用されていますか?

1月末には年末年始の支払いを控えていらしたので、すぐに調達枠を使っていただいて、ピークが山を越した春ごろにはご返済をいただくというふうに、われわれが想定した通りのご利用状況となっています。また、奇しくも調達枠の導入後には、新型コロナウイルス感染症が広がるという事態が発生。外出自粛が叫ばれて、外食などが難しくなる中、マルサンさまのような総合スーパーは、食品やお酒、生活用品といったさまざまな商品を取り扱うことにより、地域の人々の生活を支えるインフラとしての役割を発揮されています。そうした役割は今後もますます大きくなっていくでしょう。

マルサンさまは現在、埼玉県内に4店舗を運営されていますが、将来的には店舗数や出店エリアの拡大も予想されます。商工中金としても、このような出店計画が動き出した際には、他県とのネットワークを活かした出店地域の情報提供や不動産紹介、出店資金、必要な仕入れ先の紹介など、ワンストップの支援を行っていく考えであり、マルサンさまからも「心強い」とのお言葉を頂戴しています。
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