Project Story 05

国産バナナの栽培事業、 
初めて経験する業態の事業性評価とは

沖野 裕司Yuuzi Okino

2015年入社/岡山支店 営業一課

MOVIE INTERVIEW

数十年の研究の末編み出したバナナの栽培法

「えっ? 国産バナナの苗の栽培業者ですか?」。沖野はそのお客さまの事業を聞いたとき、半信半疑だった。そもそもバナナはほぼ100%が輸入ではなかったか。それもフィリピンやメキシコ、台湾といった熱帯地域の作物としてのイメージしかなかった。そのバナナが日本で育つとは、にわかには信じられなかったのである。
沖野は岡山支店の若手職員のリーダー格。融資相談や事業承継のソリューション提供に忙しいが、当然ながら、バナナの苗の栽培事業者と接するのは初めてであり、さらに融資を依頼された。ただ、あまりにもバナナの知識が乏しいがゆえに、当然ながら即答どころか検討しますというわけにもいかず、最初の訪問はバナナ栽培の基礎から教えを請うしかなかった。そういえば、岡山では、国産バナナがあり甘く無農薬で安心と評判で大人気だ。「お客さまの会社は設立して数年ほどなのですが、栽培したバナナの苗を土や肥料、ビニールハウス、丁寧営農指導で経験が乏しくとも栽培が可能な栽培キットにして全国に販売していたのです」。だが、なぜバナナの苗が日本で栽培できるのか。社長から詳しい説明を受けたが、疑問はぬぐえなかった。バナナにも実は種がある。皮を剥くと果実の中央部に黒ずんだ部分があるが、それが種の名残である。ただ、それを蒔いただけではバナナを育たず株分けが必要である、日本で無農薬の安心安全なバナナを栽培するためにはお客さまが数十年をかけて研究した栽培法が必要になるというのである。

バナナ栽培の事業性評価の前例はなし

その栽培法とは、バナナの種から顕微鏡で生長細胞を切り分け、シャーレに載せて凍結させ氷河期を疑似体験させるのである。これによって耐寒性が生まれ、植物の免疫系と活性も高まるため、日本のような温帯での栽培が可能になるというのである。ただ、ここまで聞いても沖野は半信半疑だった。そもそも、国産バナナにこだわる理由もよくわからなかった。参考になるはずといって社長から手渡された本には、沖野の疑問に対する回答がすべて書かれていた。「もともとは社長の親戚が植物の研究をしており、安心安全な作物にこだわっていたようです。自費で数十年研究し、氷河期を乗り越えた植物にヒントを得て、バナナも氷河期を疑似体験させると日本で栽培できるのではないか。その仮説のもとに研究に取り組んできたようです。」。事業化の経緯は把握できたものの、バナナ栽培の事業の評価は商工中金にも前例はなかった。そこで研究レポートや財務状況、バナナの将来性に関して勉強するとともに、上司も巻き込み一体となってこの案件に取り組むべくヒアリングを繰り返し行い、栽培場であるビニールハウスにも足を運んだ。

“目利き力”とプレゼン力に磨きがかかったことを実感

資料やレポートをもとに、融資の方向性を探っていった。どのような支援が可能なのか。お客さまとも密に連携する一方、支店で議論を重ねていった。お客さまを支援したいとの思いは、支店内で高まっていった。ただ、気がかりなのは、生長細胞から苗にして販売するまでの約半年間、バナナの株がどの程度育つのか。人件費やボイラーの燃料コストはどの程度なのか。さらに、1株の販売額はどの程度を見込めるのかといった細部にわたることも、事業性評価に欠かせなかった。栽培現場に足を運んだだけではなく、疑問が生じれば電話を入れた。「販売額の見込みや在庫の状況、つまり株が腐食していないかといった細かなことも何度も聞きました。そんな細々したことも聞くのかと言われそうでしたが、事業性評価の上でも大切なポイントですので、お手間を取らせてしまいました」。その後、創業を支援すべく地元金融機関とともに融資を実行することになったが、この案件に取り組んだことで目利き力に磨きがかかり、上司へのプレゼンテーション力も高まったと沖野は感じている。「初めて経験する業種ですから、何をどのようにつくり、どこで収益を上げているのか。その理解に努めた結果、審査の視点の幅が広がり、上司を説得できる力量も向上したように感じています」。

※職員の所属部署・掲載内容は取材当時のものです。