Project Story 04

全国展開の強みを活かしM&Aで事業拡大への強い思いに応える

重松 稔康 2001年入庫/沼津支店 営業第三課 課長(現 審査第二部 主任調査役)

買収交渉と融資の審査が同時進行

年明けに両社のトップ同士の面談が実現して、本格的なM&Aの交渉がスタートした。交渉が終了して合意か破談になるまでは、その内容が重松たちに明かされることはない。M&Aでは、売手はより高く売りたいと考え、買手は少しでも安く買収したい。お互いの利益が相反する。そこに買収資金を融資する可能性がある立場の重松が、どちらかに加担することは許されない。そのためソリューション事業部は、あくまで融資する支店から独立して仲介を行うことになる。交渉が続けられる中、重松たちはもう一つの大仕事に取りかかった。それがA社への融資だ。N社の経営内容を精査して、企業価値を試算した結果、買収には巨額の資金が必要だった。M&A交渉を仲介しているのも商工中金である以上、融資も含め最後まで責任をもって対応したいというのが重松の想いだった。

事業拡大の思いを込めて社長が決断

重松たちは社長から財務状況に関するヒアリングを行い、審査で課題となりそうな論点を支店内でまとめて作戦を練り、本部との交渉を続けた。簡単には結論が出ないのは想定内だった。重松は支店の次長とともに審査部に赴き、どうすれば融資が可能か膝を突き合わせて、粘り強く交渉を行った。その結果を踏まえて社長のもとを訪れた重松。「もう決断しなければいけないね」。社長が提案内容に合意した。買収による借り入れは、当然経営にとって負担になる。しかし、九州での事業拡大を実現し、グループ売上の目標を達成するためには、この買収が分岐点になるのも事実だった。逃げずにチャレンジする社長の姿勢に重松はあらためて敬意を抱いた。ところが、融資にGOサインが出る中、最後の詰めの段階で交渉が進まなくなった。最終的な買収の条件がN社となかなか折り合わなかったのだ。M&A自体には手出しすることができない重松や山添は、社長の悩みや苦労話を時間をかけて聞くことに徹した。ボタンの掛け違いで、双方の関係が修復不能になっては元も子もない。「融資に関しては心配ないので、いったん落ち着いて時間を見てクールダウンしましょう」

M&Aしてからが本当のスタート

「融資をよろしく頼むよ」。ようやくお互いの条件が合致し、交渉が合意に至った後、A社を訪問した重松と山添を社長が上機嫌で迎えてくれた。「良い会社を買わせてもらったよ」。現地でN社の視察をしてきた社長からの感謝の言葉だった。「九州は暑い。日差しの強さも違う。その中でドライバーのみんなが頑張って仕事をしていたよ。あの暑さの中で運送の仕事をしてたら、そりゃあ根性もつくよな」。その言葉を聞いて、重松の脳裏に、かつて自分がN社に車で向かった日の風景が浮かんできた。そして、M&Aの案件の成約にこぎ着けたことに対する、大きな達成感がこみ上げてきた。その思いは山添も同じだった。しかし、A社にとっても商工中金にとってもこれからが新しいスタートだ。現在、社長をはじめとする経営幹部が九州入りして、旧オーナーからの引き継ぎを行い、企業文化の融合を行っている最中だ。本当の意味でM&Aを成功させるためにも、ここからまた金融機関としてのサポートを、責任をもって行う覚悟だ。