Project Story 04

全国展開の強みを活かしM&Aで事業拡大への強い思いに応える

重松 稔康 2001年入庫/沼津支店 営業第三課 課長(現 審査第二部 主任調査役)

M&Aのニーズをつかみきれずに奮起

「実は今回、M&Aをしたんだよね」。社長の思いがけない言葉に、重松たちはおどろいた。重松が課長に昇進することになり、新たにA社の担当となる山添と引継ぎのあいさつに訪問したときのことだった。担当しているA社がメガバンクの仲介で地元の運送会社の買収を行ったというのである。静岡県沼津市にあるA社は、貨物の安全確保やドライバーの運行管理もしっかり行い、荷主からも大きな信頼を得ていて、それが業績の拡大につながっている地元の優良企業だ。重松が沼津支店に配属となりA社の担当になったのが2011年4月のこと。初対面ではとっつきにくい感じだった社長だが、懐に入り込んでみれば、経営に関する悩みもざっくばらんに話をしてくれる人物だった。A社が事業拡大にも積極的であることは、以前から社長が口にしていたことだった。その考えをM&Aという形で実現するにあたって、自分たちがサポートできなかったことを重松は悔やんだ。商工中金は全国展開するメリットを活かして、これまで多数の企業同士のM&Aを実現してきており、今回のA社の件についても依頼があれば役に立てたはずだった。その日は商工中金でもM&Aの提案ができることを伝え、「またニーズがあれば、ぜひお声がけください」というのが精一杯だった。

M&Aをサポートする新たなチャンス

「九州に拠点を持てたらいいんだけどね」と社長は時々口にしていた。A社は関東から九州への貨物運送の実績があり、現地で物流業務も行っていたことから、今後の事業拡大のターゲットとして、九州地区は格好の場だ。また、関東から九州に貨物を運んだ帰りのトラックが、カラにならないように積荷を確保したいという希望もあった。これらを実現するには、九州に自前の営業所が必要なのは明白で、その手段としてM&Aを考えているのではないか、と重松は考えた。次こそは、という思いではその後も定期的にA社を訪問した。そしてある日、山添がA社を訪問すると、社長から「九州でM&Aができる運送会社があったら紹介してほしいんだが」と相談を受けた。山添はその場で社長から詳しいニーズを聞き出し、さっそく重松と支店長を交えて協議を行った。そして、M&Aを取り扱っているソリューション事業部に連絡をとり、現地で事業を売却したい企業のリサーチを依頼した。M&Aは売買する会社の経営や従業員の意識、またその会社のステイクホルダー(利害関係者)に大きな影響を及ぼす可能性がある非常にデリケートな事案である。そのためM&Aをする企業同士をマッチングする場合には、双方がお互いの企業情報を見て、売買交渉に入る意思が確認できるまでは、具体的な企業名などは明かさないのが原則である。九州地区でのリサーチは難航したが、ある企業の売り情報が、企業名を明かさないノーネーム情報としてソリューション事業部からもたらされた。

山添 真 2002年入庫 / 沼津支店 営業第三課 調査役(現 課長) S社の後任担当として、M&A交渉を担当した営業窓口。 山添 真 2002年入庫 / 沼津支店 営業第三課 調査役(現 課長) S社の後任担当として、M&A交渉を担当した営業窓口。

以前、担当していた企業が買収対象に

東京の本店からやってきたソリューション事業部の担当者を連れ、重松は社長と面会した。あらためて買収の意向を確認し、守秘義務契約へのサインを経て、売却企業の情報が開示された。「これはもしかしてN社のことか」。初めてその会社の名前を確認した重松は、その偶然に驚いた。N社は、福岡支店在籍中に担当していた運送会社だった。冷蔵・冷凍食品の輸送を得意とする、当時まだ成長過程にある企業で、これからの躍進が期待されていた。以前、事業拡大のために新拠点を設置したいという要請に応えて、国の制度融資を利用するためのサポートを行ったことがあったが、現在の財務内容を見ると、そうした借り入れの額が着実に減っており、今後さらに成長が見込まれそうだ。しかし、社長本人に第2の人生で果たしたい夢があるので、会社を売ることに決めたのだった。N社の財務諸表を見ながら、重松はかつての会社がここまで成長したのかと感慨深かった。