Project Story 02

事業計画書の作成をサポートし地元メーカーの海外展開を力強く支援

阿部 豊 2011年入庫/金沢支店 営業第一課

お客さまとともに綿密な海外事業計画を策定

「とても素晴らしい提案ですね」。阿部のオファーを受けて総務部長はそう言った。制度を活用する方向で話は動き出したが、問題は融資の審査だった。綿密な事業計画書を作成して、認定委員会の審査をパスしなければ融資が受けられない。これまでの工場建設も事業計画に基づいて進められていたが、審査を通るには事業戦略や販路の開拓、売上げ予測などのさらに綿密な計画が必要だった。ところが、具体的な数字や時期は、社長の頭の中にあるだけで、明確なロードマップが目に見える形として、社内で共有されているわけではなかった。そこで阿部は総務部長に提案した。「まず私たちで計画書を作りそれを社長にぶつけてみませんか」。阿部たちは、総務部長の話をベースに、他にも社内で海外展開に関わっているメンバーにヒアリングを行い、計画書を作成していった。その一方で、阿部は商工中金の国際部の同期とコンタクトを取り、審査をパスするために重要なポイントは何かを確認していた。その項目を再度S社の総務部長と確認しながら事業計画をまとめていった。「S社の海外展開については、販売ルートや取引先など、初めて知ることも少なくありませんでした。また、今回は製造ラインへの融資であるため、そもそもの製造プロセスについて、新たに学ぶことも多く、改めてS社の優れた点を再認識できました」

社長の頭の中にある計画を可視化する

ようやくアポがとれた社長に対して、2ヶ月がかりで作成したプランをぶつけてみた。「なかなかよくできてるじゃないですか」と社長は評価したが、その考えはさらに一歩先を行っていた。阿部たちの計画では、ラオスで作った製品を、海外展開する日本メーカー向けに販売していくことを想定していたが、社長はASEANの現地のメーカーにも販売し、市場をさらに開拓して、会社を成長させていく構想を抱いていた。高性能な台車用のキャスターは、躍進著しいASEAN諸国でも評価が高く、多くの引き合いがあり、そのために着々と準備を進めていたのである。阿部たちは社長の構想を取り入れて事業計画を練り直し、完成にこぎ着けることができた。
「私自身が初めてセールスする商品であったため、正式な提案時には直属の課長に同行してもらい、交渉のフォローをしてもらいました。社長の頭の中の構想を具体化、可視化したいという発想で、計画の策定には最も力を入れました。今後の海外戦略のロードマップとして、S社の幹部にも意識や狙いを共有していただけるレベルまで、作り込みたいと考えていたのです。事業計画をお客さまと一緒に作ることで、単に融資をするだけではなく、まさに中小企業を経営する立場からものを考えることができたのは、とても貴重な経験でした」

融資を実行したラオスの製造ラインが完成

事前にポイントを押さえていたこともあって、グローバルニッチトップ支援貸付の審査は、スムーズにクリアすることができた。融資が実行されて、2017年9月にはラオス工場が無事に竣工し、完成披露式典が開かれて操業が開始した。残念ながら阿部は、当日他の仕事の都合で現地に行くことができなかった。しかし、S社からは、ぜひ一度見てきてほしいという言葉をいただいている。総務部長からは、両国のVIPも参加した式典の様子を報じるラオスの新聞を見せられた。「何が書かれているのか全く読めませんでしたが、紙面の大きさや写真からはS社へのラオス側の期待が伝わってきて、大きな仕事に関わることができたという実感が湧いてきました」。S社は現在、国内でも受注が好調で、それにともなう国内工場への投資も検討されており、阿部は話を進めようとしている最中だ。社長や総務部長とは、以前よりも踏み込んだ話ができるようになってきたと感じている。「S社からは、リーマンショックの際にも取引のスタンスを変えずに支援してくれたと言っていただいていました。お客さまとの良い関係は諸先輩が築いてくれた財産だと感じました。その経済危機から7年ほどが経過して、立ち直った会社が初めて海外拠点を作るというターニングポイントで、何か支援をしたいという気持ちがありました。その思いを形にできたことは、私自身にとっても大きな財産となりました」