Project Story 02

事業計画書の作成をサポートし地元メーカーの海外展開を力強く支援

阿部 豊 2011年入庫/金沢支店 営業第一課

海外展開での資金ニーズをキャッチ

総務部長の話は、阿部にとって初耳だった。S社は工業用や医療用の台車や、それらに使われているキャスター(車輪)の製造を行うメーカーである。その会社が進めるラオス工場の建設計画の中で、製造ラインで使われるプレス機などの機器を購入するために必要な、資金の目処がついていないというのである。担当し始めた当初から、海外製造拠点の計画については聞き及んでいたが工場建設は、メインバンクである地元の金融機関の融資によって進行中だった。ところが、土地や建物以外の部分で、資金調達ができていなかった。何か役に立てないだろうかと阿部は考えを巡らしはじめた。彼が担当する企業の中でも、S社は個性的な企業の一つである。国内に2か所の工場をもち、一般的なワゴンなどで用いられるキャスターだけではなく、工業用で用いられる車輪径300mmで、500kg以上の荷重にも耐えられる製品まで、幅広く製造している。一見何の変哲もない車輪だが、耐久性や衝撃の緩衝性にも優れており、精密な製品を扱う生産現場などで使用される台車では、衝撃を吸収することで、運ぶ物を保護する高い性能を誇る。付加価値の高さは折り紙つきで、他メーカーよりも高価格ではあるが、顧客からは根強い支持を得ている会社だった。

ラオスでの工場建設計画が進行中

S社ではこれまで国内ばかりではなく、タイ・ベトナムに営業所、出張所を構え、ASEAN市場での本格的な事業展開を進めていた。その動きをさらに加速させるための取り組みが海外生産拠点の開設だった。販売先である日本の台車メーカーの多くが、製造拠点をアジア各国に移したことによって、これまで日本から輸出を行っていた製品を、関税や輸送費の面でメリットのあるASEANで製造し、直接販売をしたいという構想があった。そこで、スタートしたのがラオスでの工場建設計画だった。タイとベトナムに拠点をもつS社にとっては、両国に挟まれた位置にあるラオスは、物流の面から見て絶好の場所である。しかも、人件費がまだそれほど高くはなく、仕事熱心な国民性などものづくりに適した条件がそろっている。そう考えた社長がラオス進出のジャッジを下した。社長は発想力に優れていて、すでに新しい開拓の余地がなさそうな分野で、新たな付加価値を生み出してきた人物だった。阿部は毎月のようにS社に通っていたが、社長が国内だけではなく各国を飛び回って営業を行っていたため、会うチャンスも少なく、もっぱら総務部長と話をしていた。

グローバルに活躍するニッチトップ企業を支援

阿部は法人営業担当者として、金沢市内を中心に、各種メーカーや地場産業である繊維業、食品関連などのさまざまな業種で、中小、中堅企業のお客さま、約100社を担当。融資をはじめとした金融サービスの提案、提供を行っている。総務部長の話を聞いていた阿部が思い出したのは、S社が石川県から「ニッチトップ企業海外展開支援事業」の対象に選ばれたことを報道する、地方紙の記事だった。石川県は、専門的な分野で傑出した特徴と競争力を持つニッチトップの企業を数多く輩出している。その一つとしてS社が認定されたのだった。そこで阿部は「グローバルニッチトップ企業支援貸出」がニーズに合致するのではないかと思い至った。これは政府の「日本再興戦略」に基づき、ニッチトップ企業が海外展開をするのに際して、商工中金が融資を行うという商品だ。低金利でありながら、返済は10年後に一括で行えば良いという条件付きであるため、その間の資金繰りにも余裕が生まれることになる。中小企業にとっては非常に有利な制度である。石川県から認定を受けたS社であれば、社内審査も通りやすいのではないか。阿部はさっそく支店に戻り、課長に制度適用の相談をして、S社への提案内容を熟考した。