Project Story 01

お客さまへのまっすぐな想いが
周囲を巻き込み、そして動かす

市村 津征Tsuyuki Ichimura

2016年入社/上野支店 営業第二課

断られたところからがスタート

支店長、次長、課長そして市村がこのA社について議論をしている時、「シンジケートローンを使っても、今回の融資額は決して小さくはないため本部の審査を通すのは厳しいのではないか?」と市村は不安に思っていた。今回のように金額が大きな融資の場合、融資決定の判断は本部の審査セクションに委ねられる。市村が思う通り、そこには大きな問題があった。A社では首都圏近郊に大型の物流倉庫を建設した際にも、すでに巨額の借入をしており、これ以上新たな融資を行うことについての審査のハードルは非常に高いもののように思われた。「しかし、数字だけにとらわれているのではなく、事業の内容や成長性そのものを加味して判断すべきではないのか。それこそが、商工中金が目指すお客さま本位の金融であり、融資を行っている以上は企業を支援する責任があるのではないか」。それが現場の上野支店としての意見だった。市村が審査の稟議を出すと、審査担当からメールで事細かな質問が送られてきた。それに一つひとつ答えていく。問い合わせの電話にも的確に答えられるように、市村は課長とともにお客さまの事業内容や経営ビジョンについて理解を深めていった。しかし、予想通り判定の結果は「NO」だった。「やっぱりダメでしたね」。市村が口に出すと、課長は言った。「担当者の君が弱音を吐いてどうする。この仕事は本部に断られたところがスタートだ。どうしてもダメな時は、最後は私が審査セクションにプレゼンするよ」。支店を挙げての粘り強い説得が始まった。

本来はメインバンクが行うべき提案

融資判断をする際にはさまざまなポイントがあるが、代表されるものは資金使途と返済原資である。資金使途とは融資をしたお金が何に使われていくのか。返済原資は融資したお金をどのように返してもらえるのかということであり、この2点を検証し説明することができれば審査セクションから了解がもらえることになる。結果、3回戻された稟議を、4回目にしてやっと通すことができた市村たちは、A社にシンジケートローンの提案を行うため訪問した。問題はA社自身がどう判断するのかだった。「せっかくの提案だけど即答はできません。少し考えさせてほしい」。せっかく本部から了解をもらったのだが、社長はすぐには市村たちの提案を受け入れることはしなかった。いま新たに巨額の融資を受けて、それが会社の将来に本当にプラスになるのか。短期融資は1年ごとに更新されるが、それを継続できるだけの成長性を維持できるのか。社長は迷っていた。そこで社長は社内で議論を重ね、今後のビジョンと事業戦略を一から見直し、改めて事業計画を練り直したのだった。そして、1週間後、提案を受け入れる決断がなされた。市村は一から見直されたA社の事業計画を見て、社長の事業にかける真摯な思いを改めて感じた。後に知ることになるが、この時社長の目は国内だけでなく海外にも向かっていたのであった。「シンジケートローンにメインバンクは賛成してくれるのだろうか」。その点は市村は自信があった。A社の財務面での現状と、今回のスキームを見れば、他の銀行も賛成してくれるはずだ。予想通り、メインバンク側も市村たちの提案に最初から同意した。「本来はメインバンクである当行が行うべき案件ですが、今回は提案してくださった商工中金さんに賛成します。融資額が多いからメインバンクだという考え方を、私たちも改めなければいけませんね」という言葉に、市村自身も襟を正した。

お客さまが事業に専念できることが喜び

シンジケートローンを組成する実務は、商工中金本部のソリューション事業部から専門スタッフが参加して、進められていった。シンジケートローンの参加には商工中金を含む3行が手を挙げたが、やはりどの銀行でも、簡単に審査は下りなかった。ある銀行から、審査を通すために商品を担保にできないかという打診があったが、社長が「自分たちの商品は子供同然だから、それはできない」と拒絶。そこで、倉庫にある商品が、売れない不良在庫ではないということを証明して、在庫の透明性を確保するために、外部評価を導入することで合意した。実は、市村達はシンジケートローンの組成確度を高めるため、融資額10億円に対して、5億の融資枠を確保していた。商工中金がこのシンジケートローンの半分、5億を支援するという姿勢をあらかじめ見せることで、他行との交渉も有利に進めることができる工夫をしていたのだった。「本部を説得するのがとても大変でした」とメインバンクの担当者も笑った。そして参加する全ての銀行から融資にGOサインが出た。この時スタートしてから丸1年が経とうとしていた。「これで事業に専念できるよ。ありがとう」。社長からの感謝の言葉を聞いて、市村は胸が熱くなった。「今まで経験したことがなかった大きな案件を経験できたのは、自分にとっても大きな自信になりました。これまで以上にお客さまとの距離が縮まり、親身になって深いヒアリングができるスキルも身についたと思います。社長自身の悩みや経営課題も教えてもらえるようになってきました。お客さまのために全力を尽くすことで、自分自身も成長できることを身をもって知りました。この経験を他のお客さまにも活かしていきたいと思っています」

※職員の所属部署・掲載内容は取材当時のものです。